先天性奇形

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先天性奇形とは

先天性奇形とは?原因と葉酸と予防の関係まとめ

先天性奇形とは先天的(生まれる前)から確認される異常の一つです。
先天異常は内分泌系や神経、知能の発達など様々なものがありますが先天性奇形は主に形態的な異常が現れます。
疾患の名前で言うと、無脳症や二分脊椎症、ダウン症、口唇裂・口蓋裂、小眼症などが挙げられます。

先天性奇形の原因

先天性奇形が発現する明確なメカニズムは解明されていません。しかし先天性奇形を引き起こす可能性のある要因は指摘されています。

 

アルコール

先天性奇形とは?原因と葉酸と予防の関係まとめ

妊娠中のアルコールの摂取は胎児に悪影響を及ぼすことが分かっています。なおアルコールにより引き起こされた奇形や障害を胎児性アルコール症候群と呼びます。胎児への妊娠中のどの程度のアルコールが胎児への催奇性を示すかは個人差もあり、明確に基準が設定されていません。そのため少量でも胎児に対して悪影響を及ぼす可能性があるものという認識を持つことが重要です。妊娠初期に妊娠に気づかず飲酒した程度ならば問題ないとされていますが、妊娠が判明したらすぐに禁酒することが重要です。アルコールが胎児に対して及ぼす悪影響には以下のような症状があります。

 

特徴的な顔貌

胎児性アルコール症候群による奇形は顔面に現れやすいことが特徴です。小頭症や低い鼻、短い眼瞼裂、黒目の部分しか目が開かない、平らな顔、小さな顔などが見られることが多いようです。

発育不全

奇形ではありませんが、胎児性アルコール症候群により出生時低体重が見られる場合があります。また乳児期に栄養摂取に関しては問題ないのにも関わらず、体重が減少することもあります。身長も年齢に比べると小さい傾向があります。

中枢神経系の異常

こちらも奇形ではありませんが胎児性アルコール症候群により中枢神経系に異常が見られる場合があります。中枢神経系に異常が現れると知的障害や学習障害、けいれんなどが確認される場合があります。また成人後、ADHDやうつ病が発症しやすい傾向もあります。

胎児性アルコール症候群には治療法はありません。そのため妊娠中の飲酒は一切禁じるようにすることが重要です。できれば妊娠が判明してから禁酒するのではなく、妊娠を計画している段階で禁酒するようにしましょう。また授乳期に飲酒してしまうと母乳にアルコールが含まれ、乳児の発達障害のリスクを高めてしまう可能性もあるため妊娠計画中から授乳期が終わるまでは禁酒が推奨されます。

喫煙

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タバコに含まれるニコチン、タール、一酸化炭素などの有害物質は胎児に対して悪影響を与えます。また喫煙は母体の血管を収縮させ胎児への血流量を減少させるため栄養素や酸素が十分に供給されなくなり、低体重などの発育不全を引き起こす可能性があります。また早産や流産の可能性も高まり、1日に喫煙するタバコの本数が多いほど比例することも分かっています。
さらにタバコに含まれる有害物質には催奇性があり、心臓や腹壁に対する奇形が増加します。また口唇裂や口蓋裂も増加する可能性があると示唆されています。喫煙により妊娠の可能性も低下するため、子どもを希望するならば禁煙を心がけましょう。どうしてもやめられない場合は禁煙外来で治療をすることも可能です。

薬剤

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かつてサリドマイド薬害によりアザラシ肢症が発症したことが問題になったように、薬剤には胎児に対して催奇形性を示すものもあります。妊娠中は医師の指示により処方された薬以外服用しないようにしましょう。また、妊娠を計画する段階で既往症がありなんらかの薬を服用している場合は一度医師に相談するようにしましょう。抗がん剤や抗てんかん薬、ミソプロストール、ワーファリンなどは妊娠時に服用すると胎児に対して催奇性を示す可能性が確認されています。

母体の感染症

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母体の症状は軽微なのにも関わらず胎児に対して奇形を引き起こす可能性のある感染症が存在します。トキソプラズマ(Toxoplasmosis)、梅毒やB型肝炎、水痘・帯状疱疹ウイルスなどその他のもの(Others)、風疹ウイルス(Rubella virus)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)の頭文字をとってTORCH症候群と呼びます。それぞれの感染症によって発生する症状は異なりますが、水頭症や小頭症、大泉門拡大、小眼症、緑内障、白内障、先天性心疾患、低体重、てんかん、精神遅滞などの症状が見られます。また流産や早産の可能性も増加します。この中では風疹が最もよく見られます。妊娠を希望する場合は事前に抗体があるかどうかを医療機関でチェックして、ない場合はワクチン接種をして免疫を獲得すると予防に効果的です。

母体の年齢

母体の年齢が高ければ高いほど生まれてくる子どもにダウン症候群が発症するリスクが高まります。20代の分娩では1000例に1例程度のダウン症児出生率に対して、40代では100例に1例ほどにまで上昇すると言われています。ダウン症候群には吊り上がった目や低身長、先天性心疾患、難聴、知的障害などの症状が見られます。

現在の日本における先天性奇形の確率

先天性奇形とは?原因と葉酸と予防の関係まとめ

日本国内において先天異常児が生まれる確率は新生児全体の約5%、うち生命に関わりうる重篤な先天異常が発生する確率は1‐2%と言われています。
この確率の中には奇形だけではなく内臓や内分泌系、神経系の異常も含まれています。

先天性奇形の検査方法

 

出産前に検査をすることによって奇形を含む先天異常を調べることができます。先天性奇形や異常を調べる検査の一例を紹介します。


無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT) 無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)は妊娠10週から14週頃に行う検査です。母体の血液の採取のみで胎児に染色体異常があるかどうかを調べることができ、ダウン症を含む染色体異常疾患の有無が分かります。ただしこの検査での結果は確定ではないため、染色体異常が疑われたら絨毛検査や羊水検査を行う必要があります。
超音波検査 超音波検査はどのタイミングで検査を行うかは実施するクリニックによって差があります。総じて妊娠中期(20週頃)に行われることが多い検査です。胎児の発育状態や臓器の異常の有無などを調べることができます。超音波検査をすることで異常の早期発見をすることができます。また異常が疑われる場合は精密検査を実施します。
NT検査 NT検査は妊娠11週から13週頃に行う検査です。超音波で胎児の後頭部の下部(首の辺り)のむくみを測定します。このむくみが厚いと染色体異常や心臓病のリスクが高まります。むくみの測定値から染色体異常により引き起こされる病気(ダウン症候群など)の確率を計算することができますが、NT検査のみでは確定しません。
絨毛検査 絨毛検査は妊娠12週から14週頃に行う検査です。妊婦のお腹に針を刺すことで胎盤の一部である絨毛を採取します。絨毛の細胞からは胎児の染色体異常や先天異常を調べることができます。絨毛検査による結果は確定診断であるため、基本的になんらかの異常がある場合は結果が確定されます。絨毛検査は出生前診断や超音波検査で先天異常が疑われる場合に行われます。
羊水検査 羊水検査は妊娠16週から17週頃に行う検査です。羊水の中に含まれる胎児の細胞から染色体の異常を調べることができます。羊水検査は確定診断であるため、基本的になんらかの異常がある場合は結果が確定されます。羊水を採取してから結果が分かるまでに2週間から3週間程度必要となります。

先天性奇形のリスクを低減するためにできること

先天性奇形が発生するかどうかはまだまだメカニズムが十分に解明されていないため確実に防ぐことはできません。しかしリスクを減らすことはできます。妊娠を計画する段階になったら以下のポイントに気を付けましょう。

 

葉酸を十分に摂取する

先天性奇形とは?原因と葉酸と予防の関係まとめ

胎児の先天性疾患の一つに神経管閉鎖障害というものがあります。妊娠の初期に胎児の神経管という器官が発育します。神経管はのちに脳や脊髄になる重要な器官です。神経管が発育する妊娠初期に葉酸が不足すると、神経管閉鎖障害の発症リスクが高まります。神経管閉鎖障害は無脳症や二分脊椎といった病気の原因となります。葉酸は妊娠初期に特に重要になるため、妊娠を計画している段階で十分に摂取することが重要です。成人女性の葉酸の摂取推奨量は240μgですが、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性のある女性に対しては400μgのプテロイルモノグルタミン酸の摂取が推奨されています。

※プテロイルモノグルタミン酸とは

野菜やレバーなどに含まれる葉酸とは構造が異なる葉酸。主に葉酸サプリメントなどに含まれ体内での吸収率がよい。

 

ビタミンAを過剰摂取しない

先天性奇形とは?原因と葉酸と予防の関係まとめ

必須ビタミンであるビタミンAは粘膜の健康の維持や夜盲症の予防のために必要になる栄養素です。しかし妊娠中に過剰摂取が続くと胎児に対して催奇形性を示します。妊娠中はビタミンAを過剰に摂取しないように気を付けましょう。ビタミンAはレバーやあん肝、うなぎ、ぎんだらなどに多く含まれています。ただしビタミンAの不足も胎児に対して悪影響があります。ビタミンAを摂取する時はニンジンやカボチャ、ホウレンソウからβカロテンとして摂取するとよいでしょう。βカロテンは体内で必要な分だけビタミンAに変換されるため過剰症をおこしません。

 

禁酒、禁煙

【先天性奇形の原因】の項目で解説した通り、アルコールやタバコには催奇形性があります。妊娠を計画しているならば禁酒、禁煙を徹底しましょう。

 

感染症のワクチンを接種する

風疹やB型肝炎など胎児に対して重大な影響を与える可能性のある感染症も存在します。妊娠をする前に自分の抗体を確認して、もし抗体がない場合はワクチンを接種するようにしましょう。

 

既往症があり服薬をしている場合は医師に相談する

薬剤の中には胎児に対する催奇形性を示すものもあります。なんらかの既往症があり服薬をしている場合は妊娠する前に医師に相談するようにしましょう。

まとめ

この記事のまとめ

  • 先天性奇形を含む先天性異常は新生児の約5%に現れる
  • 奇形をリスクを高める要因も存在する
  • 妊娠を計画しているならば奇形のリスクを高める要因を生活から排除することが重要
  • また妊娠初期の葉酸の十分な摂取は奇形のリスクを低減する

産婦人科ドクター

 

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